ヘルスステーション~医学生向けページ~

医学知識のこと、医師国家試験のこと、その他雑談。内容に関する責任は一切負いませんので、自己責任のうえでご利用願います。こんなことが知りたい!書いてほしい!などリクエストあれば、コメントにてお願いします。

【成人・老年版】①腰痛の鑑別#1ー椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症

地域に出る医療系学生へSeries、一つ目は腰痛についてです。

70%の人が生涯に一度は経験すると言われている腰痛から見ていきましょう。

簡単にするためざっくりと説明していますが悪しからず…

 

成人・老年の腰痛の原因は大きく分けて10個程度ありますが、まずは2つ説明します。

①腰椎の椎間板疾患(椎間板ヘルニア

 椎間板が損傷を受けると何らかの機序で腰背部痛を起こします。重症なものでは髄核が線維輪を通って突出する、いわゆる椎間板ヘルニアの状態になり、神経根などを圧迫します。神経根の圧迫によって感覚消失や腱反射の低下などがみられます。障害される神経根によって感覚障害、運動障害、反射、痛みの分布などが異なりますが、前かがみになると痛みが増強するのが特徴です。基本的には痛み止めor手術での対応となるはずです。行ける時(生活に困ったとき)に最寄りの整形外科受診でよいと思われますが、排尿・排便障害、臀部知覚障害、下肢筋力低下などを示す馬尾症候群(L1~L2の脊髄終末遠位の脊柱管内での、腰仙神経根が多発性に損傷された状態)では、排尿・排便障害が命にかかわるため、救急的受診が必要となります。また、発熱、姿勢に関わらず持続する痛みなどがある場合は、椎間板疾患以外疾患(硬膜外膿瘍、血腫、骨折、腫瘍など)が考えられるため、速やかな受診が必要です。

 

 

②腰部脊柱管狭窄症

 腰椎の脊柱管が狭窄していても、基本は無症状のことが多いです。しかし症状が出る場合は、典型的には歩行や立位により誘発される背中・殿部・脚部の痛みで、座位によって軽減するのが特徴です。自転車に座って前かがみになると痛くなるのが椎間板ヘルニアですが、自転車に座って痛くないのが脊柱管狭窄症。緊急性という面ではありませんので、①と同じで生活に困った時に整形外科受診でよいと思われますが、①と同じく発熱、姿勢に関わらず持続する痛みなどがある場合は、椎間板疾患以外疾患(硬膜外膿瘍、血腫、骨折、腫瘍など)が考えられるため、速やかな受診が必要です。